PAJERO ISM
「本物志向」「こだわり」を持つ各界の著名な方にパジェロの試乗やインタビュー取材を実施し
新型パジェロの魅力をおおいに語ってもらいます。

volume01  OVERVIEW 元自動車雑誌編集長が語る パジェロという車、そして日本のモーターシーン 自動車評論家 熊倉 重春 1946年、東京生まれ。69年から自動車雑誌「CAR GRAPHIC」編集部に在籍。88年より同誌の編集長を務め、95年に独立。以来、自動車やモータースポーツを中心としたフリージャーナリストとして活躍中。豊富な知識を背景にした、舌鋒鋭い評論が魅力。

 

第1回目は、36年にわたり自動車業界を見つめてきた熊倉重春氏が登場。
日本のモーターシーンをつぶさに見つめ続けてきた熊倉氏の目にパジェロという車はどのように映ってきたのだろうか?

日本の自動車産業を見つめて
まずは、私の経歴を簡単にお話ししましょうか。2006年で自動車記者歴36年になりました。そのうち、およそ25年ほど在籍した自動車雑誌編集部は、いわゆる総合自動車情報誌でしたから、特定のジャンルにとらわれることなく、およそクルマに関するあらゆるジャンルに触れてきたと思いますよ。

95年にフリーになってからは、全日本F3000やF1のテレビ中継解説をしたり、講演や講習会で喋ったりコーチをしたり、まぁ、いろいろやっています(笑)。下手の横好きで、以前はアマチュアレースにもずいぶん参加していました。

60年代後半から現在に至るまで、高度経済成長やバブル、環境問題など、社会や経済の状況が劇的に変化していく中で自動車産業をずっと見てきました。日本の自動車産業が世界のトップクラスに発展していく過程を眺めることができたのは、幸運だったかもしれませんね。

初代パジェロが提案した新たな価値

初代パジェロに先駆けて発表された2つのコンセプトカー、ジープ・パジェロ(73年・第20回東京モーターショー出品)とパジェロII(79年・第23回東京モーターショー出品)のことは、今でもよく覚えています。

当時はSUVという気の利いた言葉はなく、クロカン、ジープなどと呼ばれていたわけですが、アメリカでは、これまでの軍用車的なたたずまいとは明らかにコンセプトの異なる、乗用車的な匂いを盛り込んだクロカンが人気になりはじめていたんです。その流れを意識したコンセプトカーだな、と思いました。「この路線はアリだよね」なんて同業者たちと話した記憶がありますよ。

そしてついに82年に初代パジェロが発売。この頃、アメリカのマスキー法や、日本国内では昭和48年・51年・53年規制といった各種排ガス規制、78年の第2次オイルショックへの対応が一段落し、自動車メーカーがスポーツカーやレジャーカーに注力できるようになってきた時期なんです。

それまで非常に限られたユーザーをターゲットとしていたクロカン4駆を、「こういう楽しみ方ができますよ」という新たな提案とともに一般乗用車のユーザー目線まで落とし込んだのが、初代パジェロの最大の功績でしょう。

高度経済成長を支えた、当時のいわゆるモーレツ社員たちはわき目もふらず仕事に打ち込む一方で「これでいいのか」と自分たちの生き方に危機感を持っていました。そこで醸成されたのが、余暇に対しての憧れ。アウトドアレジャーなども然りです。これまで実現できなかった素敵な余暇への第一歩、それがカッコいい4駆を手に入れることだった。つまりはクロカン4駆が醸す記号性ですよね。実際に家族で山へキャンプに行くかどうかは別の話で、まずはクロカン4駆を持つことに意義がある、と。その機運に乗り、余暇に対する憧れをさらに加速させたのが初代パジェロだったのではないでしょうか。

2代目パジェロが牽引したムーブメント

91年、フルモデルチェンジで2代目パジェロが登場します。初代もヒットしましたが、2代目はまさに爆発的ともいうべきヒットでした。

初代は、従来のジープが持つ機能美や無骨さと、乗り心地や日常のユーティリティ性を両立し、ファンクションとファッションの絶妙な融合点を付いていたと思うんですが、その路線をさらに突き詰めて向上させたのが2代目だった。見た目も洗練されましたしね。

折からのミニバンブームも追い風でした。90年ごろから急激に市民権を得たミニバンは、従来の価値観を根底から覆したんです。それまで、リーズナブルな大衆車から始まって、自分の社会的な地位の向上に合わせて段階的に自動車のクラスを上げ、最後は高級セダンに乗る……というピラミッド的な図式があったんですが、ミニバンの登場により、それぞれの価値観で好きなクルマに乗ればいいじゃないか、という意識が浸透していったんです。

「高級セダンに乗ることが人間的価値の証明」という視点ではなく、たとえば他人とは違う価値観を持っていること、家族や仲間と余暇を上手に過ごしている印象、そういう自己演出欲求に訴える何かが2代目パジェロにあったんでしょう。SUVというカテゴリーが確立し、「都会的なシーンでピカピカに磨いた4駆に乗る」というスタイルも定着。ニーズも多様化するから、クラスやモデルも細分化していく。時代の要請に応える形でパジェロも発展していったわけです。

 
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