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初めての フライフィッシング

簡単ではないが…
一度やったらやみつきになる。そんな遊びがフライフィッシング。道具を揃えたら、次に用意するのはトラウトが泳ぐ川、晴れ渡った空、親切な先輩。これだけ揃えば、幸せな1日が約束されたようなものである。親切な先輩が見あたらない時はスクールに入るのがいい。その道のプロが最初からていねいに教えてくれるので、これが上達の最短コースだろう。スクール情報はフライショップや専門誌で入手できる。入門書も1冊くらいは揃えたい。まずは基礎知識と専門用語を覚えよう。


ヒットしたグッドサイズのヤマメ!この手ごたえがたまらない
 
これで釣れるかしら?毛鉤選びも大事な技術
 
初めて釣ったスモールトラウト。小さくても、私には大切な1尾
虫に似せた毛鉤の釣り
フライフィッシングは、彼らの餌となるフライ(虫)に似せた毛鉤の釣りである。つまり疑似餌の釣りであり、ダマシのテクニックである。魚たちが捕食している餌を知るため、水温を計り、流下する虫を調べ、飛んでいる虫を観察する。何泊かに渡る釣行では、フライを巻くタイイングセットを持っていったりもする。フライフィッシングは“釣りの博物学”といわれるくらい、自然との結びつきが緊密になっている。自然観察とそれによる毛鉤の選択は、釣りの結果を左右する “技術”のひとつなのだ。その素材には鳥の羽や獣毛を使う。そっくりに仕上げるというよりは、虫の持つシルエットや存在感をうまく表現するのがポイントだ。人間の目には?というカタチでも、サカナたちにとっては餌そのものに見えているという“魚眼”の不思議な世界。

左:夜のランタンに飛翔した大型のトビケラ【カディス】。
右:これをフライで表現したのが【エルクヘア・カディス】

フライはこれだけで充分!
フライを巻くというのはフライフィッシングの大きな楽しみのひとつだけれど、最初のうちは様々なパターンに手を出さないほうが無難。水面で使うドライフライ(羽化成虫)が3種類、水中の毛鉤はニンフ(幼虫)だけ。これで充分釣りになる。ここではグランオフのためにエキスパートがタイイングした4種類をご紹介。フックはすべてバーブレス(カエシのない毛鉤)。しっかり刺さってスっと外せるから、サカナにも釣り人にも優しい。
 
フライタイイングは川が禁漁期に入った冬の夜。孤独な時間の静かな愉しみだが、時には盛期のフィールドで水棲昆虫を観察しながら、巻くこともある。

エルクヘア・カディス
日本の川に多数生息するカディス(トビゲラ)のパターン。ウィングに北米に棲息するエルクヘア(大鹿)を使っている。浮力が高く、速い流れに最適。ボディのマテリアルを変化させることで、様々な昆虫を表現できる。サイズ#16・TMC100SP−BL
 
CDCダン
春先に多く羽化するメイフライ(カゲロウ)のパターン。水面で羽化したダン(亜成虫)のイメージを表現している。ウィングに使用したCDC(鴨のお尻付近の羽毛)は、繊細なメイフライを最も適切に演出できるマテリアルだ。サイズ#16・TMC100SP−BL

クイルボディ・パラシュート
水面での安定感はバツグンで、渓流釣り師の常備フライ。ボディのマテリアルによって、色々な虫の羽化に対応できる。ライズのない渓流で“探りを入れる”パイロットフライとしても有効だ。サイズ#16・TMC100SP−BL
 
ゴールドビーズ・ヘアズイヤニンフ
ニンフとはメイフライとストーンフライの幼虫だが、水棲昆虫をまとめて“ニンフ”と呼ぶことが多い。その代表格がヘアズイヤ。ウェイトにメタルビーズをセットしてみた。サイズ#12・TMC3761SP−BL


フライフィッシングの渓流魚たち
トラウトは冷水系のサカナだ。ニッポンの里川に棲むのは山女魚。ヤマメと読む。ひと昔前の釣り人たちは渓流の女王などと呼んだ。その気品あふれる容姿は、釣り人にとって永遠のマドンナなのだろうか。ボディを彩る楕円形パーマーク(幼斑)が、ちょっとお洒落である。ヤマメよりもさらに冷たい水を好むのが岩魚。イワナと読む。その名にふさわしく岩陰に潜むことが多い。上流の深い谷間を好むたくましい野生の住人だ。神経細やかなヤマメが女性のイメージだとすれば、おっとりしたイワナはおおらかな男性だろうか。全身に広がる白い水玉模様が、なかなかのダンディである。


渓流の人気魚種。箱根から東に住むのがヤマメで、西に住むのはその仲間のアマゴ。現在ではその分布境界がかなり曖昧になってしまった。
 
ヤマメよりも土着性が強く、様々な亜種がいる。貪欲な食性で、水面を横切るヘビ、カエル、ネズミなども捕食する。
 
正式名称はレインボウトラウト。北米原産で、管理釣り場には欠かせない存在。日本の河川では北海道など一部を除き、自然繁殖は困難である。

釣れない釣りを楽しもう!写真作家・釣り人:齋藤直樹
フライフィッシングは餌釣りのようにはいかない。思うように釣れないことも少なくない。サカナが釣れなければ景色を眺めたり、写真を撮ったり、昼寝をしたりする。そこに川を歩く楽しみ、道草を食う楽しみが生まれる。大自然の風景とゆっくり友だちになれる。釣り人にも色々な人がいるから、誰でもそうだとは言わないが、フライフィッシングのココロとはそういうものだと思っている。フライロッドは水辺を歩くためのパスポートだと言った人がいるけれど、まさに至言ではないか。
フライフィッシングはスタイリッシュな釣りだともいわれている。その理由は実はファッションなどではなく、この釣りが醸し出す独特の“余裕”による。釣れても釣れなくても楽しめる余裕のココロ。それはゆとりにつながり、ゆとりはオトナの遊び心につながってゆく。余裕やゆとりや遊びの心、日常が忘れてしまった様々なもの。フライフィッシングはそれを取り戻すことができるのだ。
  齋藤直樹
東京阿佐ヶ谷生まれ。広告、映像、雑誌、書籍の領域にまたがり文筆と写真で活躍。アウトドアライフとフライフィッシングを愛し、ブルックナーとモーツァルトを崇拝する写真作家。
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